第12回 1級キャリアコンサルティング技能士はオリンピック
第11回までは、事例指導に活かすマイクロカウンセリングを紹介しました。
第12回からは、来年の1月の試験までには時間がまだありますから、別の角度から試験対策としてできるトレーニングを書きたいと思います
1級キャリアコンサルティング技能士の試験は、年1回のオリンピックと捉えていただくとよいと思います。
ひたすら面接のロールプレイの練習をするより、まったく別の観点から自分を見直してみるのです。
1級の面接のロールプレイの合格率は、第5回では4.47%、第6回では、8.32%ですから,
100人の受験者に対し、4~8人しか受からないのです。であれば、人と同じことをやっていても受からないですよね。
例えば、オリンピックでメダルを取る選手というのは、もちろん競技自体の練習もしますが、その他に、基礎トレや筋トレをしたり、精神面を鍛えたり、食事の管理、読書・・・とありとあらゆる方向から自分を高めているのです。
その総合力をもってメダルを勝ち取るのです。そのあらゆる行動自体が自信を生み、それでも、いけるだろうなんて安心はしない。本番は委縮してしまいそうな気持をコントロールして、慌てず、そして「勇気」を出して30分間の競技に臨むのです。
第11回 マイクロカウンセリング技法を1級キャリアコンサルティング技能士実技試験 面接に活かす⑧
積極技法の続きです。
⑤フィードバック
カウンセラーあるいは第三者が相談者をどう見ているかという資料を与えることです。
クライアントの長所(肯定的資質)に焦点を合わせると効果的です。
事例指導者は、事例相談者のできている部分をしっかりとフィードバックし、さらによりよくなるためにはどうしたらいいかを一緒に考えていきます。ただし、大げさに褒めると試験ではマイナスになりますし、問題があるのに褒めると、事例相談者には気づきは与えられません。
⑥カウンセラー発言の積極的要約
面接中にカウンセラーが助言したことや、コメントしたことをクライアントに要約して伝えることです。
事例相談者と事例指導者が合意に至った自己研鑽について、ロールプレイの最後にまとめます。
⑦助言、情報提供、教示
クライアントにカウンセラーの考えや情報を伝えることです。
事例指導では、指導しなければなりませんので、後半の具体的展開で、事例相談者の成長に必要な助言、情報提供、教示をします。
⑧技法の統合
技法を統合し、折衷的にもちいます。
⑨個人的スタイルと理論を決める
統合した技法を土台とし、個人的な援助スタイルと理論を決めることになります。
第11回まではマイクロカウンセリングの技法を1級キャリアコンサルティング技能士の面接でどう生かせばよいかをお伝えしてきました。この技法が意識して使いこなせれば
口頭試問においても、やったことを言えばよいので、口頭試問がとても楽になります。
質問)自分のロールプレイを振り返ってよかった点は?
例)「信頼関係を気づくために、特にかかわり行動において、視線の合わせかた、身体言語(笑顔)、声の調子、言語的追跡に注意して関わりました。」
第10回 マイクロカウンセリング技法を1級キャリアコンサルティング技能士実技試験 面接に活かす⑦
積極技法
積極技法は様々あります。
①指示
コンサルタントが相談者にどのような行動をとってほしいかを示します。
事例指導者が、事例相談者が実行に移せる自己研鑽を提案する場合に用います。
②論理的帰結
相談者の行動によって予測される良い結果、悪い結果の両方について考えるよう促すことです。
事例指導者が、事例相談者の対応によって予測される良い結果と悪い結果の両方について考えるよう促すときに使えます。
③解釈
相談者の状況を読み取る新しい観点をコンサルタントが相談者に与えることを言います。
事例指導者の解釈を伝えます。「~のようには考えられませんか」
④自己開示
カウンセラーが自分の考えや経験などを相談者に伝えることを言います。
事例指導者は、事例相談者との関係を対等なものとし、信頼関係を深めることができます。
第9回 マイクロカウンセリング技法を1級キャリアコンサルティング技能士実技試験 面接に活かす⑥
意味の反映は、相談者が自らの成育史の中で、無意識のうちに身に付けてきた意味や価値観が含まれます。しかしそれは相談者の思考、感情、行動の裏に隠れて見えません。それを相談者に気づかせるように質問します。
例えば「あなたは仕事に対して、とてもまじめに取り組んで、最も重視しているようですね。それはあなたにとってどういう意味を持ちますか?」と展開します。
より高度な技法となります。
事例指導では、時間が短いため、あまり使うことはないかもしれません。そこまで深められないからです。しかし、自分の対応へのこだわりがとても強い事例相談者に対しては使ってみてもいいかもしれません。
例えば「50歳を過ぎていれば就職は難しいということを強く思われていて転職をすすめられたのですね。それはあなたにとってどういう意味を持ちますか?」
参照)マイクロカウンセリング技法 事例場面から学ぶ 福原眞千子監修 風間書房
第8回 マイクロカウンセリング技法を1級キャリアコンサルティング技能士実技試験 面接に活かす⑤
対決技法は、カウンセリングでは相談者の成長・変化を促すうえで大きな力を発揮します。クライアントの矛盾を見出し、それを指摘していきます。ただし、この技法を用いるためには、しっかりとした信頼関係を築き、終始支援的な姿勢を示すことが重要です。
30分の事例相談では、前半部分でどう対応したかを押さえた上で、事例相談者ができているところは褒め、課題に気づかせるには、対決を用いることが必要です。そこで抵抗に合ってしまうとすれば、まだ十分に聴けていないということがあるかもしれませんし、教育指導関係ができておらず、事例指導の場を理解していないのかもしれません。最初の流れの説明が必要です。
焦点のあてかたは、相談者のストーリーは複雑で、相談者、カウンセラー、相談者/カウンセラー、他の人、問題、家族、文化の脈絡といった焦点をあてることのできる様々な方向を含んでいます。相談者が見つけることを助ける新しい視点から見ることを促し、新しい気づきを得させることが可能となります。
事例相談者の話は、相談者をどのように見立て、相談者を支援するためにどのような視点を持っているかを質問によって探ります。例えば、まだ様々な悩みを抱えてこだわっている相談者に対して、事例相談者の価値観で転職を推し進めてしまったことを今であればどう見るか、あるいは、仕事以外の情報や、周囲の人との関係性等、情報収集は十分にできていたのかなどを探っていき、新しい視点に気づかせます。
参照)マイクロカウンセリング技法 事例場面から学ぶ 福原眞千子監修 風間書房
第7回 マイクロカウンセリング技法を1級キャリアコンサルティング技能士実技試験 面接に活かす④
はじめに
今回は、3階層目の5段階の面接構造を面接に活かします。
かかわり行動、傾聴技法ができるようになると、
これらの技法を統合して面接を行うことができるようになります。
第7回で基本的傾聴技法(開かれた質問、閉ざされた質問、
クライアントの観察技法、はげまし、言い換え、要約、感情の反映の技法)を、
適宜意図性をもって連鎖的に用いることで、
5段階の構成(①ラポール②問題の定義化③目標の設定④選択肢を探求し、不一致と対決する、⑤日常生活への般化)を構成することが可能です。
①ラポールは、かかわり行動とクライアントの観察技法です。
②問題の定義化は、情報収集が重要となります。基本的傾聴連鎖によって、クライアントのストーリーを引き出します。
③目標の設定は、クライアントの目標に焦点をあてます。基本的傾聴の連鎖によって、どのようになりたいかを語らせます。
④選択肢を追求し、不一致と対決する、は、目標達成のために具体的にどのような方法が考えられるのかを探索して決定します。
⑤日常生活への般化は、面談で修得したことを日常生活に反映するうえでの様々な方法が検討されます。
まさに、1級キャリアコンサルティング技能士の30分のロールプレイは、基本的傾聴技法を連鎖的に用いることで、事例相談者の問題が明確になり、おのずと基本的態度・関係構築力・問題把握・具体的展開と評価区分がクリアできることになります。
第6回 マイクロカウンセリング技法を1級キャリアコンサルティング技能士実技試験 面接に活かす③
はじめに
第6回では、2階層目の傾聴技法です。基本的傾聴の連鎖とは、開かれた質問、閉ざされた質問、クライアントの観察技法、はげまし、言い換え、要約、感情の反映の技法になります。
1.開かれた質問、閉ざされた質問
開かれた質問は、「どのように?」や「何を~?」「なぜ~?」と尋ねたり、
「それについてもう少し詳しく話してくださいませんか」という表現です。
閉ざされた質問は「はい」「いいえ」で答えられる質問です。
事例指導者は、5回目でお話しした、かかわり行動の言語的追跡によって、
事例相談者がどのような相談者のカウンセリングを行ったのか、
どのように対応したのか、を開かれた質問や閉ざされた質問によって引き出すことになります。
多くの情報を引き出すには、開かれた質問が有効ですが、どのように対応したかを押さえるためには、意図した確認のための閉ざされた質問が必要となります。
2.クライアント観察技法
観察によって、質問に対する事例相談者の応答の言葉と表情・態度との間の矛盾点や変化に気づくことが面談のロールプレイングでは重要です。特に矛盾点については、確認が必要となります。
3.はげまし、いいかえ、要約
はげまし、いいかえ、要約は、共感の基礎となる技法です。はげましは「ええ、それで?」といったものから、短く繰り返す、うなずきのような「非言語」によるものとがあります。
かかわり行動の姿勢を保ちつつ、しっかり事例相談者の事例報告を聴きましょう。
言い換えは、事例相談者が語ったことの本質をフィードバックします。
相談者が語ったことなのか、事例相談者が対応したことなのかを明確に言い換えます。
要約は、面接の中ほどや最後に今回語られた内容を対象として用いたりします。
面接のロールプレイ約10程度で、相談者の人物像と事例相談者の対応、主訴が語られますので、要約を入れましょう。
4.感情の反映
事例相談者の言語化されない感情を注意深く観察し、それをてがかりとして、事例相談者の感情に注意を向けてフィードバックします。
「〇〇さんとしては、事例相談者のこれからのことを思って、転職の話をすすめられたのですね。」
参照)マイクロカウンセリング技法 事例場面から学ぶ 福原眞千子監修 風間書房